2020年4月16日木曜日

リンディ効果

我々人間も含め、物理的なものは時間の経過につれて老化し、余命の期待値(平均)が削られていくが、その一方で、時間の経過とともに、その寿命が延びていくものが存在する!

例えば、印刷された本は経年劣化していき、ある時読めなくなるが、本の内容自体は、別のコピーで生きながらえられることから、必ずしも有限の寿命を有しているわけではない。そして実際、古典として古くから残っている作品は存在する。
これらの本は古いから優れているのではなく、優れているから生き延び、古い作品になったと考えるのが自然だ。それならば、長く生き延びたものほど、長い余命(言い換えれば”若さ”)を持つ傾向がありそうだと考えられる。

こうしたものの寿命は、リンディ効果と呼ばれる法則で説明される。

リンディ効果と呼ばれるのは、リンディーズというニューヨークのデリカテッセンで語られるようになったショーの継続される期間に観測された経験則が土台になっているらしい。


リンディ効果というのは、厳密に言うと
未来の寿命の期待値(または中央値)が、現在の年齢に比例する
という法則のことだ。
これは、寿命をTと置くと、
c<t<∞について(*小さすぎるtについては必ずしも成り立たない)






と書ける。

つまり、だんだん若返っていくもの、あるいは反老化の現象をいう。
これは、年を経るにつれ、システムから拒絶される(絶滅)可能性が下がっていき、結果として生き残る可能性が上がっていくために起こる。
脆弱性という観点で見ると分かりやすい。脆弱性とは変動性への感度というタレブの定義から、より時間を経たもの(大きな変動性)ほど平均寿命が長くなることが説明される。
この仕組みから、どうようの現象は他の場面でも考えられる。下で述べるパレート分布の関連から明らかなように、収入の分布なども類似の性質を持つ。(収入が大きいほど、変化に対して頑強(あるいは反脆弱)なため、より大きな財産を持つ。)


このリンディ効果の定義から、リンディ効果を満たす対象はパレート分布に従うことが導ける。このパレート分布は、収入や資産の分布のモデルなどで利用されているものだ。有名なのは、80-20ルール、というもので、全体の80%の富は、全体の20%の人口が所有しているというものだ。
この分布から、定数pが1の時、余命の期待値が年齢と同じ時、分布の分散が∞に発散する。


*
サバイバル関数(寿命がt以上である確率)をΦ(t)と置くと(Φ(t)=P(T>t))
①,②から、







特に、上の式はTがt以上という条件下で、tの直後に寿命が来る確率を表しているので、1/tの項から、時間が経つにつれて、サバイバルする確率が上がることが分かる。

また、これらの式を解くことで、




を得られる。

参考*Iddo Eliazar, Lindy’s Law, 2017

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