2020年4月14日火曜日

ケリー基準とは

最近、たまに目にするケリー基準(Kelly criterion)について。
投資や賭け事の文脈でケリー基準という単語を見かける。
これは、資産の成長率を最大化するためのテクニックで、一連の投資において、毎回一定の割合の資産を投資するという方法なようだ。
コイントスの話と被るが、ギャンブルの文脈などでよく用いられたそう
Paul Wilmottの”frequently asked questions in quantitative finance”を参考に以下続けます。
元の論文を書いているKellyはランダムなエラーを有するチャンネルでのtransmission rate の最適化や、その他のcontextでの示唆を与えようというcommunication theoryの挑戦から始まったというのが驚きました。

Probability weightingの話とも一部似ていますが、この戦略もぱっとみは、直観に反するようなやり方です。

例えば、次のような状況を考えます。
結果に偏りのあるコインを用いて、イーブンの賭けを行う(二人で同額賭けて、勝者が総取り)。
このコインで表が出る確率pが1/2より大きいとし、手持ち仮に10000円からスタートするとする。
この時、どの金額で賭けるべきか?というのが問題です。
p>1/2という条件から、賢く賭ければ、儲けられそうなことは確かです。

しかし、例えば次の賭けの期待値が最大になるような賭け方は、
x円賭けたときの、期待値がE(X)=p(10000+x)+(1-p)(10000-x)=10000+x(2p-1)から、x=10000の時であることは明らかですが、この方法を取れば当然ながら、仮に負けたときに資金が0になり賭けを継続不可能になるので、長期的な儲けで考えるとベストとは言えそうにありません。実際、有限回の賭けを行う場合には、これで期待値を最大化できたとしても、無限に賭けを繰り返せるという条件可では、この戦略だと確率1で(つまり必ず)破産します。

そこで、手持ちの資金を一定の割合で賭け続ける戦略を考えます。
Exponential rate of growth(指数成長率) G を次のように定義します。

V0が最初の資産、VNがN回目の賭けの後の資産です。
これは、賭けを繰り返していくときの、資産の平均的な成長の速さの指標です。
上記の一定の割合をfと置くと、
n回の賭けのあとの資産は、Wnは勝った数、Lnは負けた数と置いて、
Vn=V0*((1+f)^Wn) *(1-f)^Ln)
この場合、確率の定義から、lim(Wn/N)=p,lim(Ln/N)=1-pなので、w.p.1で
です。これを、fについて最適化すると、f=2p-1で、
最適化されたGは、G=plog(2p)+(1-p)log(2-2p)=1+p・log(p)+q・log(q) , q = 1-p
が導かれます。

つまり、仮にコイントスの表の確率p=0.55だとすると、f=0.1なので、資産の1割をかけ続けることで、exponential成長率Gを最大化することができます。(結構小さいなという印象です)この戦略をとることで、長期的にはそのほかのどんな割合を選んだ時よりも多くの富を有するに至ると結論できます。これより小さい割合で賭ければ、保守的で、より高い割合にすれば変動率が上がり、予測がつきにくくなり、結果長期的なリターンは小さくなります。
より複雑なケースも、条件付確率などを用いて、似たように計算されています。

期待値の最大化が直観的に正しい戦略に思えるものの、そうとも限らないというのが、一つの重要な結果だと思います。また、上のようなギャンブルの問題だけでなく、投資などにも応用可能な概念です。wikipediaによると、Warren Buffettも使っているそう。ただし、仮にギャンブルで得たお金を再度賭けに使うことが出来なかったり、毎回同額の掛け金を出せると仮定するならば、毎回期待値を最大化する賭けがベストな賭けになります。これは、破産の可能性のある個人のギャンブラーと、全体としては破産はしないギャンブラーの集合の対比と似ています。
とすると、time-probabilityとensemble probabilityが重要な概念になりそうです。

今日のごはんは中華にしました。笑

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