2020年4月19日日曜日

カップのコーヒーをこぼさないために

流体力学の復習をしていたところ、関連したトピックについての論文を見つけました。

ずばり、スロッシングについてです笑(日本語なんだろう。ウィキペディアではカタカナ表記でした…)
どういう現象かというと、例えば原油のコンテナの油が、地震などの際に、容器の揺れの影響で揺れたり、クルーズ船の中にあるプールの水が飛び散ったりするような現象です。
つまり動きのある容器の中にあり自由表面?(free surface)をもつ流体が、この容器の動きの影響を受けたときの運動です。

見つけた論文で取り上げられていた身近な例が、マグカップに入ったコーヒーを、持ち歩いている時の、カップの中のコーヒーの運きです。
この揺れが液体の持つ固有周波数と一致すると、揺れの振幅が増幅されるので、コーヒーがこぼれてしまいます。その対策を、ばねを用いたモデルから考えます。
カップやコーヒーの質量、カップに与える揺れの周波数と、使用するばねの性質(ばね係数)と固有周波数の関係を定式化すれば、コーヒーの表面の揺れを制御することが可能になり、朝寝ぼけていても、速足で運んでも、コーヒーをこぼさないようなデザインを設計可能になるだろうという寸法です。


実際、揺れの軽減装置がない状況だと、速足したとき程度の周期の短い揺れによって、コーヒーの振幅が発散(揺れの周波数が固有周波数と一致する)するという結論が得られます。他方、緩めのばねを用いた場合(あるいは吊りかご的なもので運ぶ場合)には、表面の揺れを小さく抑えることが出来るようです!笑


このモデリングや解法のテクニックが去年、今年勉強した流体力学の手法そのままだったので理論の応用先の1つの説明として使えそうですw(有用かどうかは置いておいて)


Oxfordの数学科の名誉教授による”how to mitigate sloshing”という論文です。

コーヒーを持つ人の引き起こす揺れを軽減するために、ばねを利用するモデルを考えます。下の図のPが、持ちての部分、そしてPQが手とカップの間をつなぐばねです。


問題を簡単にするために、コーヒーの表面の揺れηをhやLに比べてかなり小さいと仮定します。こうすることで、linearisationから線形の問題を得ます。
コーヒーの粘性は無視すると、最初の状態が非回転なので、流体の運動は常に非回転となります。ここから、velocity potential Φを用いて、u=∇Φと書けます。
そして、境界条件として、kinematic conditionやdynamic conditionを考えると・・・。
さらに、容器に加わる力は、ニュートンの法則から、求められます(ばねの張力はフックの法則から)。

有限の容器の中の波動なので、フーリエ級数を使ってコーヒーの固有振動数を求められます。また、ニュートンの式から、容器の揺れ(X)の振幅を求め、ここから、コーヒーの揺れηの振幅が求まります。これらより、
表面の揺れの振幅


コーヒーの固有振動数

といういかにもな式が導出されます笑
λはばねPQのばね係数です。
そしてこの式から、λの値によって、揺れの振幅をある程度コントロールできることが分かります。

参考 H.Ockendon, J.R.Ochendon, "How to mitigate sloshing" https://epubs.siam.org/doi/abs/10.1137/16M1077787

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