2020年3月11日水曜日

なぜ橋は揺れる?

オックスフォード大学数学科のパブリックレクチャー
Why pedestrian bridges wobble? Alan Champneys
について

数学科の講義室で行われたパブリックレクチャーで、実際に参加したかったのですが
最近、ウイルスが流行りだしているので、念のため出席するのはやめました。
ライブ配信があったのでそちらで視聴しました。

シンプルなモデルを作って、より本質的に問題を解くという話で、面白かった笑
日本人の研究者の名前も上がり、驚きました。



下がモチベーションとなった有名な問題、ロンドンのmillennium bridgeのオープン時に
大量の人が渡って、横揺れがひどくなったというものです。


ここで一般的に説明として持ち出されるのが、歩行者たちは、一緒に歩いていると自然と歩調を合わせてしまう傾向があり、その結果、歩行者たちの生む振動が橋の持つ元々の固有周波数(natural frequency)と合ってしまって、揺れが増幅されたという説です。
ちなみに、ダンパーdamperを設置することで、この問題を解決したそうです。

この振動が同期していってしまう現象(synchronization)は、自然界でもよくある話で、下のような現象(Huygen clocks)、土産店に陳列された招き猫の手の揺れ、ゆっくりとした拍手などのような振動性(oscillatory)の現象でよくみられるそう。


この、weakly coupling oscillatorの数学のモデルを作ったのが日本の学者の蔵元由紀という方だそうです。興味が湧いたので、調べてみたいと思います。
このモデルから、安定な周期(収束する点)を特定することが出来たりします。

ただし、このトークの肝は、このシンクロナイゼイションの理論ではなく、最初の橋の話に戻り、橋が揺れる理由について別の理論を提唱するというものでした。

実際、上に挙げた説明についてスピーカーが問題としていたのが、揺れを引き起こすのに必要な最低人数(critical number of pedestrians)を決定できないということ、そして、似たような現象が、実はロンドンのミレニアム橋以外でも確認できることから、固有周波数は必ずしも問題ではないかもしれないということでした。

彼曰く、この現象の理由はもっとシンプルで、それは”歩行者は、転ばないように歩く”ということです。
数学的には、歩行者のモデルに、negative dumping(-kdu/dt)を導入することになります。
つまり、体が左に傾けば地面を左に蹴って運動量を散らし、逆なら逆という風に歩くということですね。
すると、橋などの比較的不安定な場所では、エネルギーが蓄積されて揺れ始めてしまうと。そして、結果的に、橋が揺れ始めると、人々の横方向の歩調がシンクロし始めて、既存の観測がなされるのではないかとのお話でした。
この仮定の下、複数の歩行のモデルを考えたところ、200人前後がクリティカルバリューとして推定できたそうです。

こうして考えると、エンジニアが考え出したダンパーという解決策はまさにドンピシャということに!これが実践家の知恵か笑

数学モデルは、シンプルなものほど、仮定が少ないほど良いということで、
'Think'、そしてwisdom of crowdsを疑え、それが彼のメッセージでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿