2020年3月19日木曜日

Probability weighting

タレブの本、そしてこのブログ記事に触発されて。
大学入ってから、ずっと数学しかやっていなくても、日々の行動や決断の中で、数学を持ち出すことって結構難しいというか、やれていない。
それで、行動経済学の話なんかも、たしかになって鵜呑みにしていたものの、どうやらそんなに単純な話でもないらしいことが分かってきて、また、数学の面白さを再発見。


行動経済学の出発点となっているのが、Probability weighting(確率加重)という人間の認知のバイアスである。

このprobability weightingについて、ダニエルカーネマンなどの行動経済学者が認識の誤り(cognitive error)ととらえるのに対し、上に挙げた記事などでは、完全に合理的な行動であると述べいる。

probability weightingというのは、
特異な事象を現実よりも高い確率で起こるものと認識する傾向がある、翻って、一般的な事象に対しては現実よりも低い確率で起こると認識してしまう
という認知の傾向のこと。
とはいえ、ここで言う確率が現実に分かっているわけではない非常に抽象的なものだが。

数学的には、確率密度関数p:Ω→[0,1]が与えられたとき、このpから
決定加重関数w:[0,1]→[0,1]へのマッピングとしてとらえることが出来る。
つまり、確率の書き換え。
下の図は、累積分布関数で見るとしたようになる、ということを表している。
低い確率の事象(0の近く)には、より高い確率が、高い確率の事象には低めの確率、というひずみが表されている。

まず、問題となるのは、実験の被験者(decision maker)は、確率を推定しているということ。必然的に、推定には間違いが生じる。
独立な事象のカウントから確率を考える場合は、ポアソン過程のモデルを用いると、推定された確率がpとすると、加えて√p程度の標準誤差が生じている。
これを、考えると、被験者の立場からは、実際のカウントで得られた確率に予想される誤差を足して、不確定性を強めに考慮した確率を考える。
すると、実際に低い確率の事象の場合には、確率が多めに見積もられ、逆もまたしかりと。
一方、実験の観察者側は、最尤の確率を、確率密度関数として考えるので、結果、probability weightingという差が生じてしまう(S字カーブ)と言えるよう。

第二に、問題となるのがensemble-averageとtime-average growthの違い。
実験の観察者が、被験者の目標を、期間内の平均成長率の最大化ではなく、期待値の最大化ととらえる為、このS字カーブを認知的な歪みととらえてしまう。(エルゴード性を仮定してしまっている、つまり時間の影響を無視している)。

最後に、実験の被験者は、観察者の想定よりも多くの事態を想定してしまうため、認知がゆがむとのこと。高い平均と分散を仮定すると(左下)、probability weightingとほぼ同じ結果を得られる。

エルゴード性の話は、理解が不十分なので、もう少しちゃんと勉強する必要がありそう。
実用的だし、面白い概念なので。

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